あらすじ
王国は言った。「新天地で豊かに暮らせる」と。
嘘だった。
送り込まれたのは、魔獣が跋扈し瘴気が満ちる"還らずの大陸"。
支援物資は届かず、開拓団は飢え、病み、そして死んでいった。
少年カイルは、その地獄の中で異能に目覚める。
――【魂の継承(ソウル・テイク)】。
自分が「仲間」と認めた者が死ぬとき、その者の技能・記憶・魔力のすべての断片を受け継ぐ力。
剣士が死んだ。その剣技の欠片を継いだ。
薬師が死んだ。その薬学の欠片を継いだ。
母が死んだ。その――愛し方を、継いだ。
三百人いた開拓団で、最後に立っていたのはカイル一人だった。
大陸で十年を生き延び、脱出後さらに五年の放浪を経て、カイルは王都に降り立つ。
目的はただ一つ。
この国を、壊す。
計画の要は、王族の令嬢エレーナ。
彼女を手に入れれば、王宮の内側から国を喰える。
口説き、騙し、利用するつもりだった。
――いつから本気になったのか、カイル自身にもわからない。
だが彼女もまた、嘘つきだった。
カイルの正体に気づきながら、知らないふりで笑っていた。
三百の残火を抱えた男と、記録の行間に真実を探す王女。
互いに仮面をかぶり、互いの嘘を見抜きながら、どちらも離れられない。
復讐のはずだった。
それだけの、はずだった。