あらすじ
人生に何の手応えも持てず、「つまらない」が口癖になっていた男。
死にたいわけではないが、もし終わるならそれでいい——そんな曖昧な願いを抱えていた。
ある日、目の前で子どもがトラックに轢かれそうになる。
男の身体は、考えるより先に動いた。
気がつけば病院のベッドの上。
自分は生き延び、子どもは助からなかったと知らされる。
「助けようとしたのか、それとも——」
理由のわからない行動と、残ってしまった現実。
後悔とも悲しみともつかない感情の中で、男は初めて、自分の中に“消えない何か”が残っていることに気づく。
死ねなかったその日から、
理由のない人生に、かすかな手触りが生まれはじめる。