あらすじ
政略結婚で公爵家に嫁いで七年間。夫セドリックは私を見ない、触れない、名前さえ呼ばない。私は彼の代わりに領地を回し、帳簿を整え、隣国カーライル公国との関税協定にも毎日サインを書き続けた。
宛先はいつも、冷徹と噂の若き宰相、ユリウス・カーライル閣下。顔も知らない彼との業務文通だけが、白い結婚七年の私の心を、ひっそりと支えていた。
ある雪の朝、私は離縁を決意する。その日になって、夫が七年で初めて私の名を呼んだ。「行かないでくれ、アリア」――遅すぎます。
迎えの馬車に渡された一通の封書。差出人は、ユリウス・カーライル。
「七年前から、あなたをお待ち申し上げております」
私の手紙は、本当はどこへ届いていたのか。机の上の桃の意味は。七年分の沈黙の代償は、誰が払うのか。
これは、捨てられたと思っていた女が、実は七年間ずっと、隣国の宰相に待たれていた話。