あらすじ
北国の田舎町に住む高校生・長谷川は、世界から「色」を失っていた。
中学の卒業式の日、かつての恋人・真白(ましろ)との決定的な別れ。泥混じりの湿った雪が降る駅のホームで投げかけられた「呪い」のような言葉以来、彼にとって雪は純白の結晶ではなく、排気ガスに汚れ、踏み荒らされた「灰色の残骸」にしか見えなくなっていた。
「冬はただ耐えるだけのもの」
そう諦め、モノクロのような写真ばかりを撮り続けていた彼の前に、ある日、都会からの転校生・冬月小春(ふゆつき こはる)が現れる。
凍てついた街には不釣り合いな真っ赤なマフラーを巻き、誰もが見向きもしない雪の壁の中に「光」を見つける彼女。小春は、長谷川が頑なに拒んでいた「冬の美しさ」を、強引に、けれど優しく暴いていく。
「君が見ている灰色の中に、私が別の色を見つけられるかどうか。……試してみたいの」
彼女との交流を通じて、長谷川の心に積もった「根雪」が少しずつ溶け始める。しかし、小春がこの街にやってきた理由、そして中学時代に真白が残した言葉の真実が明らかになるとき、再び激しい吹雪が二人の視界を遮り——。
これは、深い傷を抱えた少年が、もう一度「白」を信じるまでを綴った、再生と救済の物語。