あらすじ
1997年、香港返還まで残り三年。
キョンが経営する、彌敦道(ネイザンロード)の小さな不動産会社で働くヤンは、どこか満たされない日々を過ごしていた。キョンはジェイドと結婚し、穏やかな幸せを手にしている。そんな姿を見ながら、ヤンもまた――この街が変わってしまう前に、誰かと出会い、家庭を持ちたいと、ぼんやりと思うようになっていた。
そんなある日、ひとりの少女が店を訪れる。
――アイビー。
静かで、どこか影をまとったその存在に、ヤンは一瞬で心を奪われる。初めて芽生えたような、抗えない感情だった。
だが同時に、旺角では「黒青幫」と呼ばれる組織が、麻薬取引を拡大させているという噂が広がり始めていた。
無関係だったはずの世界が、ゆっくりと、しかし確実にヤンの日常へと侵食していく。
恋と危険が交錯する中で、ヤンが選ぶ未来とは――。
変わりゆく香港の中で、守りたいものは何なのか。
そしてその想いは、この街の終わりに間に合うのか。