あらすじ
魔術の代償が「記憶」である世界――。
王都ハルセインでは、人々が大切な思い出を削りながら日々を生き延びていた。
三年前、最上位の封印術によってすべての記憶を失った元首席魔術師オルフェは、辺境の村で医者として静かに暮らしている。過去も、家族も、自分が何者だったのかも分からない。ただ目の前の命を救うことだけを選び続けていた。
そこへ現れたのは、王国騎士リア。
彼女は告げる――かつてオルフェが封じた古代魔術師が復活しつつあり、再び世界が滅びの危機にあることを。そして、彼にしかそれを止められないことを。
しかし封印術を使えば、今の記憶はすべて失われる。
村で過ごした日々も、救ってきた人々も、そして出会ったばかりのリアとの時間さえも。
それでもオルフェは選ぶ。
理由は思い出せない。ただ、自分が何かを守りたかったという感覚だけが残っているから。
記憶を失うたびに、それでも同じ選択を繰り返す男。
失われてもなお残る想いは、果たして「愛」と呼べるのか――。
これは、忘却を代償に、それでも誰かを守ろうとする一人の男の物語。