あらすじ
「スカーレット……シャルロット・スカーレットだ。君は今から僕の瞳と同じ名を名乗るんだ」
国を救い、王族に一目置かれ、十五歳にして“英雄”と呼ばれる少年、アモン・フォン・オルフェリア。
公爵家の嫡男として生まれ、剣も魔法も何をやらせても一流。誰もが敬い、誰もが頭を下げるその人生は、傍から見れば眩しいほど完璧だった。
けれど本人は、少しも満たされていなかった。
欲しかったのは喝采でも名誉でもない。
肩書きも武勲も関係なく、自分を真正面から見て、遠慮なく噛みついてくる“対等な相手”だった。
そうして彼が辿り着いたのは、まさかの奴隷市場。
そこで出会ったのは、全てを失い、檻に繋がれながらも鋭い目で睨み返してくる少女シャル。
怯えず、媚びず、怒りを剥き出しにして噛みついてくるその姿に、アモンは初めて心を動かされる。
名前を失った彼女に名を与え、居場所を失った彼女に帰る場所を与え、明日を失った彼女に、生きていくための全てを与えようとする英雄。
だが、本人はまだ気づいていない。
それは“対等”なんて生易しいものではなく、周囲から見ればどう考えても特別扱いで、しかも王女に借りを作れる立場で、許嫁までいるくせに、たった一人の奴隷少女へ人生ごと肩入れしている、盛大な自業自得の始まりだということに。
与えるつもりだった。
守るつもりだった。
対等な相手が欲しかっただけだった。
なのに気づけば、名前を与えたはずの少女に生活の中心へ入り込まれ、“奴隷だから当然”という顔で外堀を埋められ、家族も使用人も許嫁も、いずれは王女まで巻き込んで、救国の英雄サマは自分で招いた修羅場のど真ん中へ突き進んでいく。
これは、孤独だと勘違いした英雄が、全てを失った狂犬奴隷少女に出会い、救済と執着と勘違いを盛大にこじらせながら、自業自得の修羅場を量産していく物語。
対等を求めたクソボケ英雄サマの、ちょっと甘くて、だいぶ重くて、ものすごく面倒くさい恋と人生の記録。