あらすじ

二十八歳、独身。地方の量販店で魚を売る男、綾瀬。 左遷され、売上未達が一年続き、会社から詰められ、何をやっても届かない。そんな現実の中で、彼は少しずつ、自分という人間を失っていった。 正しくやれば返ってくる。 結果を出せば認められる。 失敗すれば、居場所はなくなる。 幼い頃から、そう信じて生きてきた。 音楽で評価された記憶、集団の中で浮いた記憶、誰かのぬくもりに救われた記憶。 そのすべてが、綾瀬の中でひとつの“法則”を作っていた。 だが、その法則は、現実では通用しなかった。 ある日、駅のホームに立った彼は、白く名前のない場所へと導かれる。 そこで提示されたのは、三つの選択肢。 すべてを捨てて生まれ変わるか、綾瀬として人生をやり直すか、あるいは――途中から、もう一度。 綾瀬が選んだのは、中学一年の入学式からのやり直しだった。 だがそれは、都合のいいやり直しではない。 記憶は曖昧にしか残らず、感情の歪みだけが引き継がれる。 同じ出来事は、また起こる。 そして彼は気づいていく。 自分の人生を壊したのは、不運ではなかった。 過去でもなかった。 自分の信条そのものだったのだと。 これは、人生をやり直す物語ではない。 自分が壊れた理由を、もう一度辿る物語である。

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カクヨム
カクヨム2026/04/12
  • 現在の作品Letter ~終わったはずの春に、きみの声がした~