あらすじ

ステータスなし。スキルなし。魔力なし。  鑑定石を三枚砕いて「悪魔憑き」と呼ばれた少年、カイン=ヴォルクは、魔物に村を滅ぼされた夜、木の根元で死にかけていた魔物の死骸を食べた。理由は分からなかった。ただ、食べなければならない気がした。  それが始まりだった。  固有スキル【魔喰い】――魔物を捕食し、その力を血肉に変える。だが最初に得たのは、スライム三十一匹を食べて腐食ダメージが一パーセント下がった、それだけだ。英雄譚ではない。カインは這いつくばって、最底辺から始める。スライムを食べ、ゴブリンの死骸を食べ、吐きながら食べ続ける。一年かけてようやくDランク。二年かけてCランク。その間に人が死ぬ場面を何度も見て、何度も間に合わず、何度も間に合っても何も変わらないことを知る。  カインは弱者を救いたいわけではない。世界を変えたいわけでもない。ただ強くなるために食べ続ける。食べるたびに強くなり、食べるたびに人間から遠ざかる。爪が硬くなる。目が光る。暗所で獣のように見える。やがて昼間でも瞳孔が縦になり、体毛が変質し、町の人間が本能的にカインを避けるようになる。  八年後、カインは人間適合率ゼロパーセントに到達する。  その時、彼の前には三つの選択肢がある。人間の側に立つか。魔族の側に立つか。あるいは――どちらも食べるか。  これは最強になる物語ではない。  人間が人間でなくなっていく、八年間の記録だ。

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カクヨム
カクヨム2026/04/12
  • 現在の作品魔喰いの覇者 ―灰色の顎―