あらすじ
――神の雷に『一つのことば』を砕かれ、終わらない冷たい戦争が続く世界。若き『聴き耳の魔女』は壺漬けを携えて言語と文化の壁に立ち向かう物語。
かつて神話の時代、神の怒りに触れ、人々が『一つのことば』を失い、互いを恐れ争うようになった世界。
辺境の村で育った少女・アルセアは、波の音や風の囁き、そして人の心の奥底にある真意を聴き取る『聴き耳の魔女』の才に目覚める。
立派な魔女になるため故郷を旅立ったアルセア。
しかし彼女が直面したのは、言葉の壁によって引き裂かれた人々の分断と、一触即発の冷たい戦争の危機だった。
覇権国家たる帝国貴族たちの冷酷な嫌味も、凍てつく境界線で睨み合う兵士たちの絶望も、アルセアの耳にはすべて「聴こえ」てしまう。
見えない悪意のシャワーに心折れそうになる彼女を救い、世界の壁を越える武器となったのは――。
神の雷を免れた、気高くふさふさな相棒。銀灰色の猫の「マイヤさん」だった。
そして、異国の友人と一緒に仕込んだ、心と体を芯から燃やして温める「秘密の壺漬け」。
『言葉が通じないなら、一緒に美味しいご飯を食べて、同じ火を囲めばいい』
これは、ちっぽけな魔女の卵が、気まぐれな猫を先生に、美味しい手料理と「心の声」を繋いで、冷酷な世界の分断を優しく解きほぐしていく、美味しい外交ファンタジー。