あらすじ
江戸の外れ、日当たりの悪い長屋。
そこに住む連中は、頭で考えるより先に、
路地が先に反応し、台所が先に震えるような暮らしをしている。
ある日、長屋に一枚の紙切れが流れ込む。
そこには、見えない痛み、聞こえない声、
誰も拾わない生活の重さが書かれていた。
長屋の連中は、その紙切れを囲んで、
「こりゃ頭じゃなくて、腹ん中に来る話だ」
とざわつき始める。
路地がざわめき、鍋が鳴り、
普段は黙っている古道具屋の源七まで口を開く。
「……これはな、
人が見ねぇふりしてきた“痛み”の話だ。
長屋の脳みそが、ようやく目ぇ覚ます時が来たのさ」
そこから、
長屋の連中が“見えないもの”を見ようと動き出す物語。
◆登場人物紹介(雑)
■徳兵衛(とくべえ)
魚屋。声がでかい。情に厚い。
紙切れを最初に拾って「なんだこりゃ」と騒ぐ係。
■お春
行商の女。足は速いが、心はもっと速い。
生活の痛みに敏い。路地のセンサーみたいな存在。
■おたき
長屋の台所を仕切る婆さん。
鍋の音で人の気配を読む。
島皮質そのもの。
■佐吉(按摩)
目は見えないが、空気の揺れに誰より敏い。
「今日は路地が泣いてますねぇ」とか言うタイプ。
■半次(火消し崩れ)
火事場の勘が抜けない男。
文章を読むと「どこかが燃えてる匂いがする」と言い出す。
■源七(古道具屋)
長屋の最奥に住む謎の老人。
誰も彼の過去を知らない。
紙切れの“意味”を一番深く読む。
■長屋の子どもら
読み書きはできないが、空気の変化には敏い。
「なんで胸がぎゅっとすんの?」と核心を突く。