あらすじ
世界は、静かに崩れ落ちていた。
大地はひび割れ、空は灰のように色を失い、星々はすでに一つ残らず墜ちていた。
人の姿はとうに見えず、生きとし生けるものの声もない。
あるのは、ただ一人。
薄紅の衣をまとい、焼けた大地に膝をつく女──セラ。
その手に抱かれているのは、蒼銀の髪を持つ男、ユリウス。
彼の胸元には、黒い痣のような魔紋が広がっていた。
それは、呪いが完全に発動した証。
この男こそが、世界を滅ぼす器であり、セラが命を懸けて止めようとした存在だった。
「ごめんね……また、救えなかった」
セラは震える指先で、彼の頬を撫でた。
まだ温かい──それだけが、せめてもの救いだった。
ユリウスはすでに意識を失っていた。
その顔は、最後まで何も知らず、すべてを破壊したまま──まるで罪を知らぬ子どものようだった。
彼は知らなかった。
セラが彼を何度も救おうとしてきたことも、
前の周回では互いに心を通わせ、愛し合ったことも──
「でも……私は覚えてる。全部、覚えてる。だから……まだ、終われない」
彼女の背後、死の静寂を裂くように、光の門が開く。
それは禁忌とされる回帰術式。
一度だけの“魂の跳躍”──いや、セラはすでに五度それを使っていた。
本来なら、とっくに魂が砕けてもおかしくない。
だが、それでもなお、彼女は立ち上がる。
「もう一度……もう一度だけでいい。あなたに出会わせて」
焼け落ちた大地の中、彼の名を抱いて飛び込む。
閃光が、崩壊した世界を包み込む──
そして。