あらすじ
『三本目の足音』
雨はやんでいた。
だが、路地はまだ濡れている。
足音が三つ。
二つじゃ足りない。
一つじゃ生き残れない。
ひとつは過去。
ひとつは今。
残りひとつは――忘れたふりをしている痛みだ。
杖が地面を叩くたび、
街は少しだけ本音を漏らす。
ネオンは嘘を塗り重ね、
人間はそれを信じたふりをする。
俺は信じない。
信じるには、いくつか足りない。
脚とか。
運とか。
まともな夜とか。
それでも歩く。
三つ目の音を引きずって。
逃げる奴は二つで走る。
追う俺は三つで刻む。
速さじゃない。
残るかどうかだ。
最後に残るのは、
名前でも正義でもない。
ただの音だ。
コツ、コツ、……コツ。
それが止まるとき、
街はまた静かに嘘をつく。