あらすじ
炭鉱町の外れ。崩れかけた屋敷の庭には、誰も近づかない古いブランコがある。 炭鉱夫として働く十七歳の俺――カナタは、ある雨の日、そのブランコに揺られる少女を見つける。白いワンピース。濡れた髪。足元には、紫色のアザミ。 「また、私を見つけてくれたんだね」 けれど次の瞬間、少女は庭の奥の池へ走り、そのまま溺れて消える。 翌朝。少女は何事もなかったように、またブランコに座っている。 しかも町の誰も、彼女の存在を覚えていない。 俺だけが、何度も繰り返される“少女が溺れる夜”を覚えている。 炭鉱で働き、未来なんてないと思っていた俺は、少女を救うため、閉ざされた屋敷の秘密を掘り返し始める。 だが調べるほど、炭鉱事故、屋敷の一家心中、消えた使用人、庭に植えられた大量のアザミ――全てが一本の線で繋がっていく。 そして俺は知る。 少女を殺した犯人は、まだこの町で生きている。 これは、人生を諦めていた炭鉱夫の少年が、何度も繰り返す惨劇の夜を越え、本当に守りたかったものを掴み取る物語。