あらすじ
眠れない夜、路地裏で見知らぬ店「ゆめうどん」を見つける。店主に勧められるまま「あの頃に戻れる夢」を注文すると、うどんを食べた瞬間に亡き母との懐かしい記憶の中へと引き込まれた。
その体験が忘れられず、主人公は繰り返し店を訪れるようになる。やがて現実の記憶が薄れ、自分の名前さえ咄嗟に出てこなくなる。それでも夢の居心地よさに抗えず、ついには「できるだけ覚めない夢を」と望むようになった。
しかしある日、主人公は「戻れなくなる」という店主の言葉を思い出し、恐怖を感じる。「帰りたい」と告げると、店主は最後の一杯として「現実の匂いが混ざったうどん」を差し出した。それを食べた主人公は、不完全だが確かな現実へと戻り、自分の名前と日常を取り戻す。
暖簾はもう現れない。夢の味も少しずつ薄れていく。それでも主人公は——それでいいのだと思う。