あらすじ
「特別になんて、ならなくていい。……番が現れるまでの、ただの『つなぎ』で構わないんです」
王都の大衆食堂で働く臆病な平民の娘、イリエ。彼女が恋に落ちたのは、漆黒の髪と黄金の瞳を持つ、冷酷無比な黒豹族の貴族・フェリウス侯爵令息だった。
身分違い。種族違い。そして彼は、「重い女」を何よりも嫌悪している。
嫌われることが何より怖いイリエが選んだのは、心を殺し、自らを「都合のいい道具」として差し出す歪んだ契約だった。
「愛はいらない。だが、私の所有物になった以上、それなりの扱いはしてやる」
名前を呼ばれ、髪を撫でられ、壊れ物を扱うような手つきで甘く、執拗に追い詰められていく日々。
偽りの余裕で取り繕うイリエと、彼女の嘘に苛立ち、独占欲を暴走させていくフェリウス。
やがて周囲の悪意が二人を引き裂こうとした時、冷徹だった黒豹の仮面が剥がれ落ちる――。
「逃げられると思うな。……お前を、死ぬまでこの腕の中で朽ち果てさせてやる」