あらすじ
「お前の手は油臭くて吐き気がする!」
王太子ユリウスから、料理を愛する心を「下賤」と罵られ、婚約破棄を言い渡された伯爵令嬢レティシア。着の身着のままで国境の『魔王の森』へと追放された彼女は、絶望の淵で「せめて最後においしいご飯を」と、手際よく一杯のスープを作り上げる。
その芳醇な香りに誘われて現れたのは、数百年もの間、極度の不眠と味覚障害に苦しんでいた孤独な魔王アザトースだった。
一口のスープで数年ぶりの「味」を知り、レティシアの膝の上で安らかな眠りに落ちた魔王。彼は目覚めるなり、彼女を魔王城へと連れ去り、宣言する。
「帰さない。お前がいないと、私はもう生きていけない体になってしまった」
魔王城での生活は、レティシアにとって天国だった。
魔界の希少な食材を絶品料理に変えていく彼女に、魔王軍の幹部たちは次々と胃袋を掴まれて陥落。冷酷だったはずの魔王アザトースも、今やレティシアの「あーん」なしでは食事もできず、彼女の匂いを嗅がないと眠れないほどの重すぎる執着と溺愛を見せるようになる。
一方、レティシアという「浄化の料理人」を失った王国では、深刻な食糧難と不味すぎる食事による大混乱が起きていた。慌てて連れ戻しに来た身勝手な王太子に対し、魔王が放った一言は――。
「私の専属料理人を、これ以上その汚い視線で汚すな」
捨てられた料理好き令嬢が、世界最強の魔王様を「餌付け」して幸せを掴み取る、至福の飯テロ・ファンタジー!