あらすじ
王侯貴族すら膝を折る大魔導士――
その名を、カオル・ブルーフィールドという。
魔導大国ルクセンブルクにおいて、彼はすでに伝説だった。
禁書を解読し、失われた術式を再現し、魂すら観測する異端の魔導士。
誰もがその力を恐れ、同時に求めていた。
だが――
彼が魔導を極めた理由を知る者は、誰もいない。
それは、たった一人の少女のためだった。
かつて彼には、愛した恋人がいた。
初恋であり、すべてだった少女――
だが彼女は、死んだ。
いや、正確には――
彼女が、彼を生かした。
死の狭間で出会った“神”アルティミシア。
そこでは、どちらか一方しか生き返れないという残酷な選択が与えられた。
そして彼女は迷うことなく自らを犠牲にし、カオルを生かしたのだ。
二度と会えないことを知りながら。
それから二十年。
カオルはこの異世界で、すべてを手に入れた。
力も、名声も、地位も。
だが――彼女だけが、いない。
「この世界の魔導は、“存在”に干渉できる」
師の言葉を信じ、彼は研究を続けた。
記憶、魂、座標――すべてを辿る術を求めて。
禁書を読み漁り、古代遺跡を巡り、魔王すら踏み越え、
ついには世界の根幹に触れる記録へと辿り着く。
――魂は循環している。
――神は“選択”を管理している。
――そしてその中心にいるのが、“アルティミシア”。
ならば。
奪われた選択は、取り戻せるのではないか?
たとえそれが、
世界の均衡を崩し、神に牙を剥く行為だとしても。
「――必ず、見つけ出す」
これは、最強の大魔導士となった男が、
神に奪われた愛を取り戻すために、世界の理そのものへ挑む物語。
その研究は、やがて禁忌へと至る。
――すべては、もう一度、彼女に会うために。