あらすじ
公爵夫人セレナは、結婚した日から全てを知っていた。
夫の愛人のこと。その愛人が産んだ子を、自分が育てていること。
夫が自分の仕事の手柄を全て横取りしていること。
知った上で、七年間残った。あの子に罪はなかったから。
だが七年目の春、息子が「本当のお母様に会いたい」と言った日——セレナは微笑んで離縁届を差し出した。泣きも怒りもせず、ただ一言。
「私の七年分の帳簿を、どうぞご自分でおつけくださいませ」
去った先で待っていたのは、八年前に縁談を断った不器用な伯爵と、赤字だらけの帳簿の山。
帳簿を武器に領地を立て直す日々の中、毎晩机に届く温かい茶。銘柄を全部覚えている、無口な領主。
元夫は泣いていた。私は、新しい領地の花を植えていた。