あらすじ
私の夫は自衛官だ。
帰宅すると、半長靴の中敷きを外し、帽子を決まった位置に掛け、迷彩服を順番通りに整え、きっちり十分で風呂から上がってくる。食事の速さも、食後のお茶がなくなるタイミングも、戦闘服にアイロンを当てて半長靴を磨く流れも、何もかもが驚くほど正確だ。
そんな夫を支える妻もまた、すっかりその手順を把握していて、気づけば自然に先回りしている。
そして娘の目に映るのは、毎晩寸分違わず繰り返される、少し変わっていて、でもどこか心地よい家族の風景だった。
自衛官の父と、その父をよく知る母。
二人の息の合った動きを眺めながら、娘は思う。
――うちって、ちょっと変わってる。
でも、まるでピタゴラスイッチみたいで、ちょっとおもしろい。
科長一家の、きっちりしていて、どこかあたたかい帰宅後の日常。