あらすじ
人は死後、その記憶を宿した器物へと転化する世界。戦争終結後、墓掘りとしての日常を送っていた一人の男は、ある日出会った占い師に導かれ、軍事刑務所の最奥に幽閉された「破滅の聖霊」ミリセントとの賭けに挑むことになる。彼女はかつて幸福を司る存在だったが、戦時に過剰な幸運を取り込んだ結果、決して負けられない存在へと変質し、対戦者の運を奪い尽くしては器物へと変えてしまう処刑装置となっていた。
勝負は単純なコイントス。しかしその裏では、未来を予知するもう一人の聖霊クロエの介入により、確率と運命が拮抗する。やがて墓掘りは、クロエから託された手紙を読み上げることで、ミリセントが抱え続けてきた罪悪感の正体を暴く。それは、かつて自らの意志で負けようとしながらも勝ってしまい、相手を死なせたという後悔だった。しかしその相手の正体が占い師によって明かされ、彼女はただ役目を果たしたに過ぎなかったのだと知らされる。
さらに手紙は、墓掘り自身が何も望まない存在であること、そしてクロエが既に死んでおり、ミリセントとの最後の戦いのためにこの勝負を仕組んだことを明かす。やがて墓掘りは、自らの存在を賭けてコインを投げる。彼は器物へと転化するのだった。
残されたミリセントは涙を流しながらも、彼の残したコインを手に再びトスを行い、一人きりでその生涯を終える。
そのような未来を見たという予知の聖霊に軽口を叩きながら、ミリセントは墓掘りの住む教会横の小屋へと向かうのだった。