あらすじ
「世界中の誰よりも君を愛しているよ。――だから君は、ここで死ななければならない」
公爵令嬢リゼットの婚約者は、次期国王として名高い完璧な王太子・クロード。彼はリゼットに他者が入り込む隙を与えないほどの狂気的な溺愛を注いでいた。しかし、幸福の絶頂である「結婚の儀」の前夜になると、彼は必ず無表情のまま現れ、絶望の涙を零しながら彼女の首を絞めて殺害する。
殺されては1年前に「死に戻る」理不尽なループ。逃亡も拒絶も無意味だった5度目の死の瞬間、自分を殺す彼の瞳から涙が零れていることに気づいたリゼットは、6度目の人生で覚悟を決める。
「逃げるから殺される。ならば彼の懐へ飛び込み、狂気の奥底にある真実を暴いてやる」
あえて彼の異常な過保護を受け入れ王家の秘密を探ったリゼットは、城の地下で恐るべき真実に辿り着く。王家の血筋には「心から愛する伴侶を、世界を滅ぼす『災厄の魔女』に変えてしまう」呪いがかけられていたのだ。魔女化を止める唯一の手段は、結婚前夜に愛する者自身の手で伴侶の命を絶つこと。彼はリゼットと国を天秤にかけ、泣きながら殺し続けていた。さらに、国はその魔女の力を軍事利用しようと企む大神官に裏から支配されていた。
そして、リゼットは最大の謎に直面する。時間を巻き戻す魔法は、術者の魂を削る禁術。時間を戻していたのはリゼットではなかった。
――リゼットを殺すたびに絶望し発狂したクロード自身が、自らの魂と記憶を砕いて5回も時を巻き戻していたのだ。すでに魂の限界を迎えた彼に、次のやり直しはきかない。
黒幕の陰謀で魔女化が加速し、迎えた運命の夜。呪いの強制力によって再び彼女の首に手をかけるクロード。しかしリゼットは逃げず、その手を優しく包み込んだ。「今度は私があなたを救う」――リゼットは己の魔力を無償の愛へと反転させ、クロードの砕けた魂を修復しながら呪いの核を打ち砕く。
殺されるたびに愛を深めた令嬢と、殺すたびに狂っていった王太子。死のループの果てに呪縛を打ち破り、真実の愛を掴み取るまでのダーク・ラブサスペンス。