あらすじ
昼休み、大学の中庭の桜の木の下。
ひとり静かに読書をしていた私の日常は、ある日、カメラを持った少年――成瀬真との出会いで変わった。
「写真、撮ってもいいかな」
人付き合いが苦手な私に、彼は何度断っても懲りずに声をかけ続けた。
やがて二人で過ごす時間は、かけがえのない日常になっていく。
――けれど、ある日彼は突然、姿を消した。
そして誰一人として「成瀬真」を覚えていなかった。
実は彼は、“別の世界”から来た存在。
この世界にいられるのは、十二年に一度、たった一季節だけ。
去るとき、関わった人間の記憶から完全に消える――はずだった。
ただひとつの例外を除いて。
「君の世界から僕が消えるとしても、また君に会いに行く」
十二年越しに再会した二人。
だが再び訪れる別れの時、彼は選ばなければならない。
――彼女の記憶に残ることを望むか、
それとも、“本当のさよなら”を告げるか。
これは、忘れられることでしか守れない恋の物語。