あらすじ

手で丸を作り覗き込むと、相手が今望んでいるものが見える。それが無悟の持つ不思議な力だ。無悟はその力を使い、人の望みを「見て」満足する。だが、見えることとわかることは、全くの別物だった。  無悟の親友・花楓は、人の表情や雰囲気から感情を察することに長けている。見えなくても、わかってしまう。そんな二人は正反対でありながら、互いにとって唯一無二の存在だった。  ある日曜日、二人で遊びに出かけた帰り道。無悟は駅でふとした拍子に花楓の頭の上を覗いてしまう。そこに映し出されたのは、花楓と兄が並ぶ姿だった。普段から兄を慕い、何でも話してきた花楓。しかし兄は彼女の存在を花楓に隠していた。「なんで俺には話してくれないんだ」という、行き場のない想いが花楓の望みに滲んでいた。  無悟は何気なくそれを口にしてしまう。見えたことを見えたまま、ただ言葉にして。花楓の怒りが爆発した。「わかろうともしないくせに」。その言葉が無悟の胸に刺さる。花楓はその場を去り、二人は別れてしまう。  一人になった無悟は初めて気づく。自分はずっと人の望みを「見て」、知った気になっていただけだと。花楓がいつも自分のそばにいてくれたことも、先回りして気遣ってくれていたことも、何一つわかっていなかった。  翌朝、無悟はいつもより早く登校する。そこに息を切らして現れた花楓。無悟の顔色を見て、無言のまま腕を引っ張り、保健室の前へ連れ出す。「お前は嘘が下手なんだよ」。花楓は怒りも理屈も抜きに、ただそこにいた。二人は言葉少なに学校を抜け出し、パンケーキを食べに行く。  店で偶然出くわした花楓の兄は、ラインの文面一つで花楓の異変を察し、深夜に帰宅していた。見えなくても、わかる人間がここにもいた。兄の言葉を布団の中で聞いていた花楓の頭の上に、そっと望みが灯る。  それから一週間後。無悟、花楓、兄、その彼女、四人が駅に集まる。無悟がふと全員の頭の上を見ると、そこには全員同じものが映し出されていた。

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カクヨム
カクヨム2026/04/10
  • 現在の作品わかる君とわからない僕