あらすじ
「忘れさせるんじゃない。思い出しても大丈夫だって、思えるようになるだけでいい」
「別に」「普通」。
感情にフタをして生きてきた、高校二年生・水無瀬透。
中学の時に両親が離婚してから、彼は強い感情を持たないように、穏やかで空っぽな日々を選んでいた。
ある放課後、一人になれる場所を探して逃げ込んだ薄暗い美術準備室で、透は一人の少女と出会う。
同じクラスの篠宮彩羽──生まれた時から、世界がすべてモノクロに見える少女。
色のない世界を「個性」と受け入れて穏やかに生きる彼女の隣は、感情を閉ざしてきた透にとって、不思議と居心地のいい場所になっていく。
やがて、篠宮がクラスメイトの異変に気づく。
「あの子、薄くなってる」
志田真央の世界から、「赤」が消えていた。
信号の赤も、夕焼けの赤も、自分の血の色まで──すべてが灰色に。
それは、心が限界を超えた人の世界から特定の色が物理的に消える現象──「色彩乖離」。
失われた色を取り戻すには、本人が手放そうとした感情と、もう一度向き合うしかない。
色が見えない彼女の観察眼と、色が見える彼の目。
二人で始まる、誰かの「忘れたい記憶」を解きほぐす物語。
そして色を取り戻そうとするうち、透自身の空っぽな心にも、少しずつ光が差し始めて──
これは、失われた色と、失われた感情を探していく物語。
色のない彼女のほうが、いちばん綺麗に見えた少年の、静かな青春の始まり。