あらすじ

平安の世、養和の大飢饉を終わらせるため、自らを神に捧げた巫女・稲穂姫の物語——それが稲葉伝説である。 博物館のショーケースに静かに佇む一本の笄。 その細く鋭い姿を見た瞬間、私は詠み人知らずの古い和歌を思い出した。「願へども こうがい刺さじ 蛤よ 貝合わせども 君はおわせじ」 笄と蛤。 恋の歌に同居するにはあまりにも不自然な二つの言葉が、ここでは痛いほど必然となる。 なぜならば、それは言葉にできない想いを、ただ物に託して交わした祈りであった。 伝説の裏側に、誰にも知られず息づいていた、美しくも儚く散ってゆく恋物語が、今、静かに紐解かれる。

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小説を読もう2026/04/10
  • 現在の作品千年前の恋歌の朽ちたる草は蛍となりて泣き虫の唄を歌う。されど、いつかの日々が願いし事なれば