あらすじ

留守番は慣れているはずだった。両親が共働きだったから、幾度となく経験してきたはずだった。けれども今日は違う。暗闇が酷く恐ろしい。    前田は同じクラスの男の子だ。雰囲気は暗いけれど喋りやすい奴でオカルト好き。その前田はここ最近休んでいる。  「休みの理由を聞いているか」と尋ねてくる寺元に、俺は「先生は何も言っていなかったけれど」と返せば、彼は一瞬言おうか迷ってから、「寺元はもう死んでいるかも知れない」と言った。あんまりにもあんまりな言葉に俺は彼を思わず叩いたけれど、寺元の顔は真剣で強張っていた。  「あいつ、あの廃墟に行ったんだって」、聞くところによるとこの町には廃墟がある。それもいわく付きの。俺は気がついた、前田と少し前に行ったその場所が、件の廃墟だと。「なんで行ったのか」尋ねる友人に、「前田の家だと誘われて行ったのだ」と俺は返した。  今日は俺は家で一人留守番の日だった。寺元は言った。父親も母親も帰ってきたとしても出るな、と。例え寺元が来ても合図をするまで出るなと。  準備があるといった寺元は後で必ず家に行くからと言い残し、帰って行った。  俺は家で一人過ごしていた。怖くないようにテレビをつけてぬいぐるみも用意して、けれども途中で寝落ちて、次に起きた時には、妙に静かだった。  チャイムがなる。妙に間延びしたチャイムが。寺元か尋ねた俺の声に、母親の声で言葉が返ってきた。  リビングへ逃げ帰れば、今度は窓の向こう側から声がした。寺元の声だ。けれど合図がない。  俺が恐怖に縮こまっていれば、カーテンの向こうに前田がいた。開けて、と彼は言う。俺は窓を開けてしまった。その腕を、窓の隙間から掴まれる。  引き摺り込まれる、その時、助けに来てくれた寺元が棒状のものを窓の隙間へと突き立てた。  酷い悲鳴。前田は窓の外、苦しそうに手を振って、蝋燭が掻き消えるみたいに消えた。  それから、今もまだ、彼は見つかっていない。

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カクヨム
カクヨム2026/04/10
  • 現在の作品俺らと前田