あらすじ
終わりのない氷河期。
太陽が死に絶えた世界で、人類は怪物「霜鬼」に抗うため、己の命を燃やして戦っていた。
限界を超えれば、愛する人の「記憶」や「感情」すらも燃料となり、最後は狂気の中で美しい氷像へと変わる絶望の世界。
外郭街の屑拾い・蘇烈(ス・レ)には、最初から体温がない。
彼は命を燃やさない。代わりに敵の放つ「絶対零度」を心臓で呑み込み、すべてを灰燼に帰す漆黒の炎を放つ。
だが、その圧倒的な力の代償は――彼自身の「人間としての感情」が永遠に削り取られていくことだった。
「悲哀」を忘れ、「怒り」を失い、少しずつ冷たい機械へと成り果てていく蘇烈。
彼は、記憶を燃やしてまで誰かを守ろうとした愚かで美しい同胞たちの「遺品」を、その破旧な外套に縫い付けていく。
重くなる外套を引きずり、彼は世界の元凶たる『極寒の眼』を目指す。
自分が完全に「人間」でなくなる、そのタイムリミットが来る前に。
これは、愛と記憶の残骸を背負い、心を失っていく怪物の、最も悲しく熱狂的な反逆の旅。