あらすじ
後妻と義姉に虐げられ、屋根裏部屋で過ごしてきたエリス・ラプンツェル。そんな彼女に舞い込んだのは、辺境の軍人貴族ヴァルター・クロイツ侯爵との縁談だった。無口で不器用な夫との暮らしは、悪くなかった。しかし結婚からわずか三月、夫は出征し——やがて戦死の報せが届く。未亡人となったエリスのもとに届いた隣国の茶会への招待状。笑顔の裏に毒を隠した夫人たちの言葉を、エリスは静かに受け流した。それでも胸の奥に残ったのは、夫のことをほとんど知らないままだったという、小さな後悔だった。――帰ってきたら、もう少し話をしよう。捕虜として生きていたという報せを受けた時、エリスは迷わなかった。砂漠を越え、十七日。たどり着いた先は、天井の崩れた寂れた教会だった。