あらすじ
「大丈夫だよ、ルミエ。君を『完璧な英雄』にしてあげる。――何があってもね」
平和な村で、互いにシロツメクサの指輪を贈り合い、将来を誓い合った幼馴染のアルティナとルミエ。
しかし、運命は残酷だった。ルミエが選ばれたのは、世界を救う救世主――『勇者』。その重圧に震える彼女の姿を見たアルティナは、ある狂気的な決意を固める。
「君が迷わず剣を振るえるように、私が君に討たれるための『最凶の魔王』になろう」
名を捨て、姿を変え、愛する人の最大の敵となったアルティナ。
すべてはルミエを光り輝く英雄に仕立て上げるための、孤独な献身。
だが、アルティナは知らなかった。
ルミエが手にした聖剣には、持ち主を「完璧で純真」な存在へと造り変える代償として、人間としての記憶と心を一つずつ削り取っていくという凄惨な副作用があることを。
戦うたびに削れていくルミエの心。
愛した人の名前すら忘却の彼方へ消え去り、ただ「魔王を討つ装置」へと変貌していく少女。
これは、愛する人の記憶を守りたかった魔王と、愛する人のために記憶を捧げ続けた勇者が辿り着く、世界で一番美しくて空虚な平和の物語。