あらすじ
「……うおっ、な、な、なあっ」
なんだ、と言おうとしたが、舌がもつれて言葉にならなかった。そのまま舌がぐるりと捻転し、喉の奥へ滑り込むんじゃないかという意味のわからない恐怖に襲われ、おれは反射的に喉元を押さえた。
体を起こし、尻をシーツに擦りつけるようにして後ずさる。背中を壁に預けたところで、ようやく大きく息を吐いた。
……驚いた。朝、目を覚ますと、知らない男が床で寝ていたのだ。
最初は死体かと思った。だが、おれが声を上げた瞬間、男はめくれ上がったTシャツの裾から覗く腹をぽりぽりと掻いた。
どうやら生きているらしい。Tシャツに半ズボン。褐色の肌に太くて濃い眉毛。外国人のようだが、なぜおれの部屋に……。盗みに入ったはいいが、疲れてそのまま眠ってしまった……か? 馬鹿みたいな話だが、他に思いつかない。
おれは男を起こさぬよう、できるだけ音を立てずにベッドから降りた。
そのままそろりそろりと台所へ向かい、引き出しを開けると、中から護身用にと包丁を一本取り出した。柄を強く握りしめ、ゆっくりと男へ近づき、中腰になって肩を軽く叩く。
「おい、おい、起きろ……起きろって……おいっ」