あらすじ

『嘘つきな隣人と、透明な恋の音』

壁一枚ぶんの距離で
あなたの生活音が、夜に溶ける

カップを置く音
鍵を回す音
たったそれだけで
胸が少し、うるさくなる

「これは契約だから」
何度も言い聞かせた言葉は
あなたの声で聞くたびに
少しずつ、嘘になっていった

触れた指先は
偶然なんかじゃなかったのに
離れていく体温だけが
やけに正直で

あなたは嘘つきだ
優しくするくせに
本当のことは、何もくれない

——でも

いちばんの嘘つきは、きっと私だ

好きじゃないふりをして
平気な顔で隣に立って
心の奥で鳴っていた音を
聞こえないふりしていた

透明な恋だった

形もなくて
名前もなくて
触れようとすると
すぐ消えてしまいそうで

それでも確かに
ここにあった

あなたが笑った夜も
そっけなく背を向けた朝も
全部、全部
ちゃんと響いていた

ねえ

あの日、勇気を出して
その音に名前をつけたとき

初めて
世界が、少しだけ色づいたんだ

壁の向こうじゃなくて
同じ部屋で

同じ音を、聞いている

もう、嘘じゃない

これはきっと
ふたりで見つけた
本物の、恋の音


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アルファポリス
アルファポリス2026/04/10
  • 現在の作品『嘘つきな隣人と、透明な恋の音』