あらすじ
「──成瀬って子、まだ、やってたんだ」
トランポリン、というスポーツがある。一度の演技は三十秒、やり直しのない一回勝負。そんなシビアな競技だ。
中学二年の夏。予選を初めて突破して出場した全日本ジュニア選手権で、成瀬公音は憧れと、同時に挫折を味わった。
全国という大舞台で軽やかに、白鳥のように舞う、鱶丸リョウカという一人の少女。
届かないと分かっていても、並びたくて。
燃える気持ちが先行して、空回って。
そうして、公音の情熱は砕け散った。
──それから、およそ一年半。
古野富田林高校に進学した公音は、あの日のトラウマを思い出す。
後ろ髪を引かれ、後ろめたい気持ちに苛まれ、再び燃えようとする心に水を差し、他人の目を避けていた彼の前に、突如、新設された「トランポリン部」が現れる。
もう一度跳びたいのか、跳ぶべきなのか。
自分の本心も分からずに、体育館に足を運んだ公音は、次の瞬間絶句する。
そこにいたのは、創部したのは、彼がかつて憧れを抱いていた少女、鱶丸リョウカだった。
「──本当に、来てくれたんだ」