あらすじ
その人のそばだけ、痛くなかった。
イリスは王宮の隅で息を殺して生きてきた。他人の悪意が肌を刺す体質のせいで、人の多い場所にいるだけで全身が悲鳴を上げる。母を亡くし、王宮本殿に召喚された日、廊下を歩くだけで肌が焼けた。
たどり着いた図書館で、第三王女ルーナと出会う。王宮一の天才と噂される姉。その人のそばだけが嘘のように静かだった。悪意がない。敵意もない。何もない。生まれて初めて、誰かの隣で深呼吸ができた。
けれどルーナには重大な欠陥があった。どれほど頭が切れても、人の悪意だけは一切感じ取れない。笑顔で近づく敵をそのまま信じてしまう。イリスは決めた。この人のそばにいよう。私の痛みが、この人の盾になるなら。
天才の頭脳と、みそっかすの直感。二つが揃った時、宮廷の嘘が次々と暴かれていく。だが最大の秘密は、一番近くにあった。なぜ姉は悪意を感じないのか。その答えにたどり着いたとき、イリスは泣いた。