あらすじ
『あれは人ではない。天鳥船は神々の御船。あんな人影が御船でこの地に舞い降りたはずがない・・・。それなら、天鳥船で舞い降りた神々はどこへ行った?』
「火見様、どうしました?」
考えこむ火見を、速手がまた心配そうに見た。
「兄の鍛冶場に現れたあの人影は、人の心を操ります。神ではありませんぬ」
「では、その人影が、あの山に舞い降りたと?」
「天鳥船は神々の御船。あの人影が御船に乗ってきたとは思えませぬ」
『本当にそうだろうか?あの人影も天鳥船を操るとしたら・・・』
一瞬、火見の心に不安がよぎった。
「ですが、天鳥船が舞い降りて、妙な人影が現れたなら、天鳥船で来た、と思うのが当然と思いますが・・・」
「では、あなたが話すとおり、天鳥船に乗ってきた、とします。水上部族を動かしているのが、あの人影と伝えるのですか?」
火見は立ち止まった。
「はい、人の心を操るなら、神々の声を聞く巫女がいない水上部族は、部族の長が心を操られているのを知らずにいるのでは?」
そこまで話して、速手は気まずそうに火見の背後に従った。
火見は速手の気持ちを知ってふりかえった。
「何を気にするのです?巫女の私を気にせずともよいのです。時によって、神々は人々の心に言葉を聞かせます。あなたの心にも・・・」