あらすじ
幕末の外様藩士景司は、上役の身代わりとして入牢する。士分ゆえの簡素な優遇はあれど、自由のない日々。だが格子の外に広がる小さな庭に、景司は飯粒を置くようになる。やがてアリ、雀、鳩、猫、犬、そして夜には狸までもが集い、それぞれの流儀で関わり合う小さな世界が生まれる。季節は移ろい、雪がすべてを覆い、やがて溶ける中で、景司は「変わるもの」と「残るもの」の理を見つめる。看守や役人との静かな交流も重なり、やがて出牢の時が訪れる。外へ出た景司は、あの庭で見た営みが広い世界にも続いていることに気づく。閉ざされた場所で得た静かな洞察は、彼の生き方そのものとなり、新たな歩みを支えていく。