あらすじ
二分先のコンビニへ行くのさえ億劫だった僕が、三千キロ先の君を目指した。
福岡の街は、すでに残酷なまでの新緑(葉桜)に覆われていた。
「桜が咲いたら、全部忘れることにしたの」
遠く函館で暮らす恋人・ハルからの、最後通牒のようなビデオ通話。
忘れていたのは、僕の方だった。
社会人になったら、日本で一番最後に咲く桜を二人で見ようという、あの日の約束。
時速300km。新幹線を乗り継ぎ、僕は失った春を追い越しに行く。
嵐に揺れる蕾が、彼女の「さようなら」の合図として開く前に。
――これは、冷え切った二人の時間が、最後の一輪によって溶け合う再生の物語。