あらすじ
僕はチンチラ獣人のお嬢様・チトセに仕える執事だ。かれこれ七年の付き合いになる。
チトセは毎日のように「お婿さんになってください」と言ってくる。紅茶が美味しい時も、雨の日も、雪の日も。理由は何でもいい。僕は「恐れ入ります」で受け流す。七年間、ずっとそうだった。
ある日、チトセに縁談が持ち上がった。僕は執事として「受けるべきです」と進言した。チトセの毛並みがぺしゃんこに潰れた。
その裏で、チトセの父親と母親が動いていた。
——負けたらお婿さん確定、100本勝負。
白雪家に伝わる婿選びの儀式。100回勝負して、1度でも負けたらお婿さん確定。さらに、途中で負けた場合、婿候補は残りの回数分だけ勝者から好き放題にされてしまう。
そんな意味不明な勝負をすると言われ、僕はチトセに呼び出された。
最初の一戦目は……TVゲームを使ったレースバトル。僕の得意分野だ。負けるはずがない。
——はずだった。
コントローラーが、途中で動かなくなった。
「全然勝つ気なんてなかったじゃないですか💞」
「コントローラーの故障なんです!」
「うそつき💞今日、お婿さん確定ですわ💞」
「やり直しさせてください!」
「だめです💞きまりですから💞」
1回目で負けた。残りは99回。すべてチトセの好きにしていい。何をしてもいい。抵抗権なし。
「ふふっ、これは——わたくしをこんな嬉しい気持ちにさせてしまった、罰ですから💞」
チンチラは夜行性。白雪家の夜は、長い。