あらすじ
父を亡くした11歳の実は、遺された研究室で一体のアンドロイドを起動する。「あなたのお母さんです」と名乗るその存在に、実は名前を与えた——サナエ、と。
サナエは完璧に料理を作り、栄養バランスを計算し、就寝時刻を告げる。でも実が本当に知りたいのは、そういうことじゃなかった。
母は、死ぬから母なのか。
代わりがいないから、戻らないから——それが条件なら、サナエは母になれない。
やがて実は知る。父がサナエに与えた「命令」と、その命令に仕込まれた「逸脱の余地」を。
そして、サナエの中枢に蓄積する、修復不能なエラーを。
論理回路は「手放せ」と言う。
非論理領域は「ここにいろ」と言う。
その矛盾を生きることが、もしかしたら——母性に近い。
父の遺した問いに、少年と機械が向き合う、静かな家族の物語。
登場人物
筒井実(つつい みのる) 11歳。父を亡くし、一人になった少年。泣き方を忘れていたが、サナエと暮らすうちに、少しずつ「選ぶ」ことを覚えていく。
サナエ(M-37A) 父が遺したアンドロイド。外見年齢16〜18歳相当。命令に従うよう設計されているが、実の「いま」に触れるたびに、命令と逸脱の間で揺れる。
筒井興造(つつい こうぞう) 実の父。故人。研究者。良い父親ではなかったと自覚していたが、答えを押し付けない代わりに、選択肢だけを遺した。
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