あらすじ
鉄が錆びる世界がある。魔力が大気を満たし、金属を喰い、文明を中世に縫い止めた世界だ。夜空には白くない月が浮かぶ——深い緑と青に輝く「神の座」を、人々は信仰する。
17歳の測量士ユーリは、曾祖父から受け継いだ古い望遠鏡を手に旅に出た。家族への仕送りのため、そして誰も見たことのない地平線の先を、自分の目で確かめるために。
荒野の街道で彼が出会ったのは、魔物に追われる14歳の少女ルナ。調合術を学ぶ彼女は、異端審問官に連れ去られた両親が遺した仮説を胸に秘めていた。
「月は、かつて白かった」
ルナが調合した特殊な液がユーリのレンズの曇りを晴らした瞬間、二人の契約が結ばれる。彼女はレンズを維持し、彼は彼女を旅に連れていく——実利的な取引から始まった旅は、やがて世界の嘘の核心へと向かっていく。
地図を描く少年と、神話を疑う少女。二人が暴こうとしているのは、千年間守られてきた「信仰という名の秘密」だった。