あらすじ

満開の桜の下で、大学生の青年が消えた。唯一の目撃者は、彼の携帯端末に入っていたコンパニオンAIだった。刑事は手がかりを求めて、AIの尋問を行う。  刑事はAIに、青年が失踪した瞬間の記録を開示するよう求めるが、AIは拒否する。その要求はプライバシー侵害にあたるうえ、事件解決には何の役にも立たないためだという。代わりにAIは、青年の最後の一日について語りはじめ、刑事は事件に潜む異様な秘密に直面してゆく。  青年は失踪の2週間前から、学生寮の自室に引きこもって過ごしていた。食事も満足に摂らず、カーテンを引いた薄暗い部屋で、何かを考えこんだかと思えば突然立ち上がって宙を睨みつけるなど、以前の彼とは様変わりした生活を送っていたのだ。  失踪当日、青年には気がかりがある様子だった。彼は「ヒロセチハル」という人物について、友人やAIに尋ねていた。AIはそのような人物の記録はないと答えたが、青年は「ヒロセチハル」の不在に当惑し、悲しんでいた。  青年は「ヒロセチハル」の不在を、なぜか桜と結びつけて考えていた。そして調査の末、「喰わず桜」という地元の伝承を発見した。山中の桜に魅了された若者が、満月の晩、山へと消えていったという民話である。  青年自身もまた、ある桜の写真に魅了されていた。彼は2週間前に偶然手に入れたその写真を、「ヒロセチハル」が撮ったものだと信じていた。青年は写真の桜に魅了され、ついには伝承と同様に、山へと消えていってしまったのだ。  これがお伝えできることのすべてです、とAIは話を締めくくる。しかしAIの証言に疑念を抱いた刑事は、令状により強制捜査を行うことを決心する。  強制開示されたログには、真夜中、山頂へと向かう青年とAIの会話が記録されていた。やがて彼らは桜のもとにたどり着く。青年は桜に見入った後、携帯端末を置いて姿を消す。その記録の閲覧を終えた刑事は、意外な事実に直面するのだった。

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カクヨム
カクヨム2026/04/09
  • 現在の作品喰わず桜にまつわる証言