あらすじ
「その令嬢と婚姻を結べば、王国は滅ぶ」——占師の言葉ひとつで、私の処刑は決まった。
王子殿下の判断は正しい。数百万の命と私一人。恨む気にもなれなかった。
けれど夜明け前、処刑を任された騎士・ヴェルトは私を牢から連れ出した。理由も告げずに。
山奥の小屋で始まった静かな二人暮らし。林檎の甘さ、焚き火の温もり、笑った顔。気づけば私は、幸せという言葉を思い出していた。
——それが罪だと、知っていたのに。
私に課された呪いの本質は、不幸ではない。幸福を満たしてから、それと等しい絶望を与えること。
器が満ちるほど、砕けたときの音は大きくなる。
「分かっています」と彼は言った。それでも花を摘んできた。それでも笑わせようとした。それでも、隣に座った。
愛は救いではなかった。呪いを加速させるものだった。それでも私は——手を、離せなかった。