あらすじ
「ダンジョン元年」から十二年。
地下に出現した異空間《深淵》と、それを攻略する冒険者制度は今や日本社会の一部となっていた。
高校を卒業した夜霧 蒼汰は、将来の目標も特になく、流されるまま冒険者登録をした最弱の新人だ。
Fランクの最底辺。同期に笑われ、モンスターに逃げ回り、唯一の能力《影縫い》は「影を数秒固定できるだけ」の欠陥スキルと嘲笑される。
ある日、単独潜行中に暴走モンスターの群れに囲まれた蒼汰は、死を覚悟した。
その瞬間、嵐のように現れた一人の女性冒険者が、たった一人でその場を鎮圧した。
霧島《きりしま》 澪《みお》――Sランク上位、業界でも「最強格」と囁かれる二十五歳の剣士。
彼女は蒼汰を助けた後、一言だけ言い残して去った。
「生きてるうちに強くなりな」
その言葉が、蒼汰の胸に深く刺さった。
情けない、悔しい、でも――あの背中に追いつきたい。
なんとなく始めた冒険者稼業に、初めて「理由」が生まれた瞬間だった。
欠陥スキルと呼ばれた《影縫い》の本当の可能性を誰も知らないまま、蒼汰の這い上がりが始まる。