あらすじ
三年間、約束はただの一度も守られなかった。
誕生日も、卒業の舞踏会も、二人で過ごすはずだった日はいつも同じ言葉で奪われた。 幼馴染が倒れたから。 体が弱い子だから。 強い君ならわかるだろう。
わかりたくなんてなかった。 ただ隣にいてほしかっただけだった。
侯爵令嬢セシリアは自ら婚約の破棄を告げた。 涙はもう枯れていた。 泣くには長すぎた三年だった。
父から示されたのは、辺境への道だった。 社交界で氷の公爵と恐れられる人物のもとで、領地の立て直しを手伝えという。
辺境は荒涼としていた。 華やかさはなく、特産品もなく、冬を越す食料すら足りない。
けれどそこにいたのは、言葉より先に行動で示す人だった。 約束した日に必ず現れ、提案すれば耳を傾け、結果を出せば認めてくれた。
それだけのことが、どうしてこんなに胸を打つのだろう。
頭の奥に浮かぶ不思議な知識を手がかりに、セシリアは凍てつく辺境の地で小さな一歩を踏み出す。
一方、王都では誰も知らない真実が静かに綻び始めていた。 あの幼馴染の病弱は、本当だったのか。
約束を守る人と、約束を守らなかった人。 その差が何をもたらすのかを、セシリアはまだ知らない。