あらすじ
田中ゼンは、どこにでもいる普通の会社員だった。
夕食のチャーハンを作ろうとした瞬間、彼はまばゆい光に包まれる。
目を開けると、そこは女が剣を握り、男が守られる「立場が逆転した」異世界だった。
この世界では、料理は「聖なる儀式」と呼ばれ、男が触れるなどあり得ないことだった。
召喚されたゼンを見た女帝エルフリーデや女騎士たちは、あからさまに彼をバカにした。
「男が料理だと? そんな細い腕で、聖なる道具を扱えるはずがない」
女たちは、ゼンを「無能な男」だと決めつけ、冷たい嘲笑を浮かべる。
だが、ゼンが中華鍋を握り、コンロの火をつけた瞬間にすべてが変わった。
ゴォォォォッ! という猛烈な炎が、天井を焦がさんばかりに吹き上がる。
「きゃあああ!? な、何なの、あの恐ろしい火柱は!」
女たちは悲鳴を上げ、腰を抜かして厨房の隅へと逃げ惑った。
だが、ゼンはその業火を目の前にして、不敵な笑みを浮かべていた。
(……これくらいの強火じゃないと、パラパラにならないんだよな)
鋼鉄がぶつかる激しい音が、厨房中に鳴り響く。
米の一粒一粒が黄金に輝き、暴力的なまでに美味そうな匂いが爆発した。
あまりの衝撃に、女たちは持っていた武器をガシャンと床に落とした。
「嘘よ……あいつ、調理の熱で大気中の魔力を練り上げているというの!?」
一口食べた女帝エルフリーデは、衝撃のあまりその場に凍りついた。
彼女の瞳からは涙がこぼれ、失われていた魔力が、ゼンの料理によって一気に回復していく。
「ゼン……あなたは、私を救いに来た『真の聖者』なのですね!」
この国で一番偉い女帝が、ゼンの前に跪き、ガタガタと震えながら彼を仰ぎ見た。
さっきまでゼンをバカにしていた料理長も、床に額をこすりつけて泣き崩れた。
「弟子にしてください! その神の業を教えてください!」
(いや、本当にただのチャーハンなんだけどな……)
中華鍋一本で、異世界の常識を粉々に破壊するゼンの物語が、今ここから始まる。