あらすじ
---あらすじ---
黒い毛皮と十字の傷をもって生まれ、里の獣人たちから疎まれてきた狐のシト。彼はある日突然、狼の皇帝の番になることが決定する。
だが、皇帝の元へ向かうソリの中で、シトは運命的な出会いを果たした。
「私と逃げよう。二人で、どこまでも」
白い狸の獣人───モクにそう言われ、シトはその手を取ってしまう。
お人好しな白狸と、世間知らずの銀狐。奇妙な二人は寄り添いながら、知らない世界を旅していく。
しかし、その平穏を世界は許さない。忍び寄る皇帝の追手、モクが隠していた本当の使命───さまざまな苦難を乗り越えた先に、シトは果たして何を見るのか。
---ネタバレあらすじ---
獣人たちが平和に暮らす、ある異世界。
その東にある国の、狐たちが暮らす里で生まれたシトは─────生まれついて、黒い毛並みと十字の傷を持っていた。
忌避され、疎まれ、飼い殺し同然で生かされるシト。彼はいつしか心を閉ざし、生きていくために人を騙し、嘘を塗り重ねる人生を送っていた。
そんな彼に、ある日突然転機が訪れる。
「貴方がシト様ですね? 北の国の皇帝、ホロウ様が貴方をご所望です。さあ、行きましょう」
北にある国の皇帝が、シトを番として見初めたのだ。
とてつもない幸運と名誉に里の狐たちは喜ぶが、シトは素直に喜べなかった。それまで散々手酷く扱ってきたのに、手のひらを返して喜ぶ狐たち。人間味もなく機械的に、シトを連れ出そうとする北の国の使者。その全てに嫌な予感を覚え、しかし拒否することはできなかった。
そうして連れ出され、北の国へ向かうソリの中で、シトは運命的な出会いを果たす。
「私と一緒に逃げてくれ」
使者の中に化けて紛れていた白い狸の獣人、モクにそう誘われて、シトは思わず手を取ってしまう。
使者たちや皇帝の目を掻い潜り、シトはモクに連れられて旅に出る。知らない世界、知らない文化、知らなかった食べ物。そして、初めて触れる人の優しさに、シトは段々と心を開いていく。
しかし、シトを連れ出してくれた命の恩人であるモクは、異常なまでのお人好しだった。それにより、道中でさまざまなトラブルに巻き込まれ、シトはその中で自身の想いと向き合っていく。
はびこる差別、超えられない種族の壁、それでも夢を追う姿。犯した罪から逃げず、向き合い、救いを求めて足掻く影。さまざまな人と触れ合う内、シトはその想いが恋なのだと自覚する。しかし同時に、なぜモクは自分を連れ出してくれたのかと疑問が芽生え始める。
一方、モクもシトに言えない秘密を抱え、現実逃避のように旅を続けていた。しかし、それを世界は許さない。刻一刻と期限は近づき、世界はモクに残酷な選択を迫る。
「その者が生きている限り、我らが主の復権は果たせないのですよ」
北の国の皇帝がシトを見初めた理由。それは、銀狐を迎えて身も心も食らうことで、力と寿命を手に入れるため───残酷な真実を知ったシトは、それでも前を向こうとする。モクがいればそれで構わない、と決意を固める。
しかし、程なくしてモクの本当の使命が判明する。モクはかつて王位を追われた皇帝の末裔のために、シトを殺しにやってきたのだった。
殺す隙なんていくらでもあったのに、どうして殺さなかったのか。シトにそう尋ねられたモクは、出会った時に一目惚れしていたのだと明かす。シトも自分の思いを伝えようとするが、皇帝ホロウの追手によってモクが人質に取られ、番として召し上げられた。
ホロウと対峙し、それでもモクへの恋心を捨てないシト。彼は喰われそうになるが、間一髪でモクに助けられる。その後、二人の懸命な抗いによって、ついにホロウは打ち倒される。
そうして自由になった二人は心を通わせ、新たな旅に出たのであった。