あらすじ
取り柄のない子爵令嬢が、病弱な侯爵との政略結婚を二つ返事で受けた。
周囲は同情の目を向ける。
嫁の来手がない病人の世話係だと。
けれど私には前世の記憶がある。
介護士として人の隣に座り続けた三十年の記憶と、幼い頃あの子に言われた一言が。
「ミーナがいると安心する」
十年ぶりに再会した幼馴染のレイスは、杖をつき、頬がこけ、それでも昔と同じ目をしていた。
彼が私に最初にかけた言葉は「同情なら帰れ」。
私が返した言葉は「政略結婚です」。
魔法も剣術も使えない。薬の知識もない。
私にできるのは、そばにいることだけ。
それが本当に誰かを救えるのかどうか、答えはまだ見えない。