あらすじ
三十代、独身男、無職、精神障害者。
就労移行支援に通いながら、意味を見いだせない資格勉強を続ける日々。
疲れ切った私は、いつものように川にかかる赤い橋へ向かった。
そこは、現実の重さから少しだけ解放される場所だった。
三月の冷え込む夜、橋の上で出会った一人の女。
彼女は、欄干の下を指差して言った。
「ここはね、軽くなるの」
覗き込んだ先にあったのは、
川の中から伸びる無数の“手”。
それは、何かを引きずり込みながら、
同時に“重さ”を引き受ける存在だった。
少しだけ楽になったはずの現実。
しかしその代償は、確実にこちら側へと侵食を始める――。
これは、「置いてきたはずのもの」が戻ってくる話。