あらすじ
「汚い。なんて汚いんだ。君、最後にいつ体を洗ったんだ?」
Fランク探索者のサトウ。
彼は一度も魔物を討伐したことがない。
その理由は、彼が極度の潔癖症であり、戦うことよりも「ダンジョンを掃除すること」に心血を注いできたからだ。
ある夜、サトウはダンジョンで拾った不思議な球体で、自身の清掃風景を配信し始める。
彼にとっては、単なる作業記録のつもりだった。
だが、世界は震撼する。
巨大な魔物をモップ一本で「粗大ゴミ」として払い、
国宝級の秘宝を「ガラスの破片」として磨き上げ、
人類未踏の深淵を「放置された汚部屋」として浄化していく。
あらゆる攻撃を受け流し、神速で不浄を断つその歩法は、
無意識のうちに武の極致に達していた。
「世界一の称号? そんなことより、この油汚れを落とすのが先だ」
本人は自覚なし。
世界中が彼を「最強」と崇めても、彼は今日もバケツを手に、ダンジョンの隅々まで磨き上げる。
これは、一人の掃除屋が、世界を美しく変えていく物語。
【登場人物紹介】
◆サトウ(佐藤)
本作の主人公。
十九歳。
Fランクという最低評価の探索者ライセンスを持ちながら、一度も魔物を討伐したことがない変わり種だ。
極度の潔癖症であり、ダンジョン内の不浄を「生理的な嫌悪対象」として捉えている。
彼の目的は富や名声ではなく、ただ目の前の空間を清浄に保つことだ。
そのため、本来は戦闘訓練に費やすべき時間を、独自の清掃技術の研鑽に捧げてきた。
腰に下げた多機能バケツと、特注の伸縮式モップが彼の唯一の武器だ。
無自覚なままに、清掃動作を極限まで洗練させた結果、あらゆる攻撃を受け流し、急所を的確に突く神速の歩法を身につけている。
◆氷室 ひなこ
探索者管理公社に勤務する二十四歳の分析官だ。
数万件に及ぶ配信映像をチェックし、有望な新人を掘り起こすのが仕事だ。
冷徹なほどに理性的だが、サトウの「異常な清掃配信」を偶然見つけたことで、その常識外れの才能に驚愕し、彼を陰ながら追い続けることになる。
サトウの無自覚な無双ぶりを、論理的に解説する役割を担う。