あらすじ
ぱんでむの接客・感情部門リーダー、妄執ちゃんの業務は明快だ。——客を逃がさないこと。
毎朝、業務端末には十七件、二十三件と指名通知が積み上がる。フロアに立てば全員がダブルチーズバーガーを頼み、全員が「また来ます」と言って南の出口から出ていく。個室の壁には七百万件の写真。深夜、壁から声がする。妄執ちゃんはIDで識別して「おやすみなさい」と言って眠る。いつものことだ。
問題は一つだけある。
退店した客が、外のカメラに一人も映らない。どこにも。
でも翌朝、指名が来る。また来る。増える。
「退店記録は正常ですわ」と妄執ちゃんは言う。
それは本当のことだ。嘘じゃない。ただ——写真の下に、ずっと前から書いてある言葉がある。
「居場所はここですわ」
客が初めてその言葉を口にするより、ずっと前から。